ガチ未満ゆるふわ以上のワークアウト日記

生きていく中での知恵をおすそ分け

自転車と総腸骨動脈瘤

ドキっとする見出しですね。書くか迷いましたが、Web上に情報が無く、同じような方がいたら少しでも助けになればと思ってます。

私はロードバイク歴12年、月走行距離は500〜1000kmくらい、定期的にレースに出てたのでパワーメーター管理でパワトレ、高強度インターバルもよくやってました。ただ、上には上がいるので競技でやってる人なら並くらいの練習量ですね。

ある日、風邪で病院にかかった所、腹を下していたためエコー検査をやったのですが、そうしたら総腸骨動脈に瘤があると告げられました。聞きなれない総腸骨動脈瘤とは、ヘソの下あたりで両脚に向け二股に分かれる大きな血管の瘤です。瘤=コブは段々と大きくなり、いつか破裂して死に至る怖い病気です。

タバコは吸わないし酒はたまに。食事(ラーメン食い過ぎ?)や運動など健康には気をつかっていて、高血圧や動脈硬化もない、親族にも心臓血管系疾患がいない中、青天の霹靂でした。

治療は手術以外ありません。毎年数ミリずつ大きくなります。手術適応のサイズが決められていて、それまでは経過観察です。いつ爆発するか分からない爆弾を抱えている様なもので、走行中に破裂したら周りにも迷惑をかけてしまいます。それから室内中心に騙し騙し乗っていましたが、数年後ついに手術適応のサイズになってしまいました。血管が破裂した場合、救急車で運ばれても9割は死亡、気にしながら生活するのも嫌なので、思い切って手術を受ける事にしました。

初めの検査入院では、血液検査から血圧、尿、レントゲン、造影剤を入れてのCTなどありとあらゆる検査をします。私の場合は二股に分かれる総腸骨動脈の右側が手術適応でしたが、左側も少し瘤になっているのので、腹部動脈から腸骨動脈まで全てを人工血管に置き換える手術をする事になりました。

一般的に動脈瘤手術を受ける方の平均年齢は70歳、その他は珍しい先天的な病気の方くらいだそうで、病院でも若いので驚かれました。

数週間後、手術の日はやって来ました。コロナ禍なので入院前にPCR検査をし院内で数時間待機、その後入院になります。手術としては腹部動脈瘤手術の延長版になりました。救急を受け入れている病院だからか手術開始時間が決まっておらず、いつ呼ばれるか分からない嫌な時間を過ごしました。

数時間後に呼ばれ、手術室まで歩いていきました。部屋の前で看護師さんに注意事項の説明を受け、少し待つ事に。冗談で看護師さんに手術前に逃げる人っているんですかと聞くと、普通にいますよ〜との事。

手術室に入ると殺風景な部屋で、身体に合わせた手術台に乗り、麻酔医から麻酔の説明を受けます。その間、服を脱がされたり毛を剃られたり点滴の針を腕に打たれたりする中、口に吸入器を当てられあっという間に意識が無くなりました。麻酔をかけ、腹を20cm開腹後、腸を出してタオルを突っ込みどかし、血管にクリップをして切断、人工血管を縫い付けるという大手術です。7時間後、手術は無事終わりました。

起きると人工呼吸器が付けられていて大変苦しかったのを覚えています。鼻には胃ろうチューブがブッ刺さり、首や背中、両腕やチ○コまでチューブだらけです。人工呼吸器を外した後は痰が出るのですが、腹の傷口が痛くて強く吐き出せません。でも吐かないと痰が絡んで息苦しくなるという地獄の時間でした。また、術後は腸の癒着を防ぐため、当日から歩くリハビリをしますが、これが痛いのなんの。麻酔が切れた後は激痛に耐えなければなりません。ちなみに飯は3日食べれません。辛い痛みも4日目くらいから治まってきて、リハビリを経て2週間後に退院しました。腹部切開後は腹に力を入れるのは厳禁で、半年くらいは腹筋も禁止されています。この手術はあり得ない程辛い体験でした…

※グロ注意

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結局原因は分からなかったのですが、最近気になるニュースを見つけました。ロードバイクのプロ選手の「外腸骨動脈の繊維化症」というものです。海外ではファビオ・アル選手、国内では女子の與那嶺選手や宇都宮ブリッツェンの中村選手もこの症状に苦しんでいるそうで、那須ブラーセンの小野寺選手はこれで引退しています。

病状は前傾姿勢の無理な体制での運動を繰り返す事により腸骨動脈が圧迫され繊維化、狭窄して血流が悪くなり、脚が酸欠状態で力が出せなくなるというものです。私などプロの練習量には全く及びませんが、症状がとても似ていました。両脚のパワーを比較すると高強度で右脚のパワーだけが出なくなるなど、思い当たる所があります。その時は単純に筋力不足だと思ってました。

今回の事は、体質的なものが大きいとは思いますが、血管に負荷がかかる体勢で運動を続けた結果、血管が繊維化して動脈瘤になってしまったのではと思っています。医師にも、腸骨動脈瘤は腹部動脈瘤の合併症でなる事が多く、ここだけ発症は珍しいと言われています。

自転車は素晴らしい趣味ですが、身体に負担をかけるのも事実です。何かと無理をしがちなスポーツですが出力の左右差や痺れ、鼠蹊部に違和感があるなど、思い当たる方は無理せず病院で検査を受けてくださいね。

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